あなたの判断ミスは、体調不良が原因かもしれない「健康診断・人間ドックを経費化する完全ガイド」

日本人が健康診断を受けない理由

「また、あの案件の判断を誤った」
「最近、集中力が続かない」
「部下の顔色を見誤って、退職者が出た」

こうした経験に心当たりはありませんか。

あなたは、それを「経験不足」や「判断力の衰え」と片づけているかもしれません。しかし、本当の原因は別のところにあります。

血圧の乱れ、血糖値の異常、慢性的な疲労。
これらが、あなたの意思決定を狂わせている可能性があるのです。

50代前半のある建設業社長は、人間ドックで耐糖能異常と脂肪肝が見つかるまで、「自分は健康だ」と信じていました。

無症状だったからです。しかし医師から「このまま放置すれば、3年以内に糖尿病に移行し、5年後には合併症のリスクが高まる」と告げられました。

彼はこう振り返ります。「もし検査を受けていなければ、数年後に倒れていた。そうなれば、会社の資金繰り判断も、後継者選定も、すべて中途半端なまま放り出すことになっていた」

あなたの健康は、あなた個人の問題ではありません。それは、従業員の雇用、取引先との信頼、家族の生活、すべてを支える”経営資源”そのものです。

本稿では、多忙なあなたが「健康診断・人間ドックを会社の経費として活用する方法」を、税務の裏付けとともに徹底解説します。読み終える頃には、「明日、何をすべきか」が明確になっているはずです。

目次

なぜあなたは「健康診断・検査を受けないのか」

「では、経営者はなぜ“検査を受けない”という選択をしてしまうのでしょうか。理由はとてもシンプルで、しかも多くの経営者が共通して抱えているものです。」これから共通の3つの事項についてお伝えしていきます。あなたも当てはまる部分がないかをぜひ参考にしながら読み進めてみてください。

理由①:「時間がない」という言い訳

「来週は銀行との交渉がある」 「来月は決算準備で手一杯だ」 「再来月は新規事業の立ち上げだ」こうして、あなたは検査を先延ばしにし続けます。しかし、考えてみてください。もしあなたが倒れたら、その銀行交渉も、決算準備も、新規事業も、すべて止まります。時間がないから検査を受けないのではありません。検査を受けないから、将来もっと多くの時間を失うリスクを抱えているのです。

理由②「健康診断の費用が自腹になるのでは」という不安

「会社のお金で自分の検査を受けていいのか」 「税務署に否認されたら、結局自腹になるのでは」こうした不安が、あなたの足を止めています。しかし、適切に制度設計すれば、健康診断・人間ドックは会社の経費として認められます。 国税庁の資料にも明記されています。

国税庁は、企業が従業員に対して健康診断や人間ドックの受診機会を提供し、その費用を会社が負担した場合、一定の条件を満たせば「福利厚生費」として認められると明記しています。
法人税基本通達9-7-15)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/07.htm

問題は、「知らない」ことではなく、「知っているのに動かない」ことです。

「自分は大丈夫」という根拠のない自信

「まだ50代前半だ」 「毎日階段を使っている」 「タバコは吸わない」こうした理由で、あなたは自分を「健康だ」と信じています。しかし、高血圧も、脂質異常も、糖尿病予備軍も、初期段階では無症状です。 自覚症状が出た時には、すでに手遅れになっているケースが少なくありません。

あなたの体調不良が、会社に与える「見えないコスト」

健康診断が経営者に見過ごされる理由

コスト①:判断ミスによる機会損失

血糖値の乱れは、集中力の低下を引き起こします。また、厚生労働省では、慢性的な疲労は、リスク評価の精度を下げます。高血圧は、イライラや焦燥感を生み、対人関係の判断を狂わせます。

“厚生労働省の「過労死等防止白書」では、慢性的な疲労や長時間労働が「注意力・判断力の低下」を引き起こすことが明確に示されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137553.html

このように、経営者の疲労は、単なる体調不良ではなく、意思決定の質そのものを低下させ、事業リスクを高める要因として警告されています。

ある製造業の社長は、設備投資の判断を誤り、3,000万円の損失を出しました。後から振り返ると、その時期は睡眠不足と血圧の乱れがピークに達していたといいます。「あの時、冷静に数字を見ていれば、絶対にあの判断はしなかった」と彼は語ります。あなたの判断ミス1回が、年間利益の何割を吹き飛ばすか、考えたことはありますか。

コスト②:社員の士気低下・離職

経営者の体調不良は、社員にも伝わります。イライラした態度、判断の遅れ、朝令暮改——これらはすべて、社員の信頼を失わせます。「社長が最近おかしい」という噂が社内に広がれば、優秀な社員から辞めていきます。採用コスト、教育コスト、そして何より「組織の士気」という目に見えない資産が失われます。

コスト③:突然の長期休業による事業停止リスク

もしあなたが脳梗塞で倒れたら、会社はどうなりますか。

・銀行は融資を止めるかもしれません
・取引先は契約を見直すかもしれません
・社員は将来不安から転職活動を始めるかもしれません
・家族は相続や事業承継で混乱するかもしれません

あなたが1ヶ月休むことの経済的損失を、計算したことはありますか。 おそらく、人間ドックの費用の100倍以上になるはずです。

「健康診断・人間ドックを経費化する」ための国のルールを押さえる

ここからは、具体的な制度設計の話に入ります。あなたが「明日から動ける」ように、実務レベルで整理します。

国税庁が認める「健康診断に関する経費化の条件」

「企業が人間ドック等の受診機会を提供し、その費用を負担した場合には、その支出は福利厚生費として取り扱うことができる」ただし、条件があります。「役員・特定の地位にある者だけを対象とする場合には課税の問題が生じる」

つまり、「社長だけ」「役員だけ」はNGです。 制度として全社員(または一定条件の全員)に開かれていなければ、税務署は「それは給与だ」と判断します。

なお、これらの取り扱いはすべて国税庁が公開している基準に基づいています。

企業全体に公平に提供される健康診断・人間ドック費用は福利厚生費として認められやすい一方、役員だけを対象とする制度は「給与」と見なされる可能性があります(法人税基本通達9-7-15、所得税基本通達36-30)。https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/36/02.htm

経営者が陥りやすい「4つの健康診断の経費の落とし穴」

落とし穴①:「役員だけ」の制度にしてしまう

「うちは社員が若いから、検査は必要ない。役員だけでいい」こう考えて、役員だけを対象にすると、税務調査で否認されます。会社負担のつもりが、結局「役員賞与」として源泉徴収され、社会保険料も発生します。

回避策
「40歳以上全員」「管理職以上全員」など、一定条件を設けた上で、役員もその条件に含まれる形にする。

落とし穴②:高額すぎるコースを選んでしまう

「せっかくだから、最高級のコースを」と考えて、30万円のドックを会社負担にすると、税務署は「常識の範囲を超えている」と判断する可能性があります。国税庁資料では、70,000〜90,000円程度が”給与として課税する必要がない”例として示されています(法定基準ではなく、実務上の通念です)。

回避策
基本コースは会社負担、高額オプションは本人負担と明確に分ける。

落とし穴③:制度を作っても、実際には社長しか受けていない

社内規程は整備した。対象者も明記した。しかし、実際に受診しているのは社長だけ——これでは、税務署は「実質的に社長のための制度だ」と判断します。

回避策:対象者全員に案内を出し、受診記録を残す。希望者がいない場合でも、「案内した事実」を記録しておく。

とし穴④:個人事業主が自分の検査費用を経費にしようとする

あなたが個人事業主の場合、自分自身の健康診断費用は「事業関連費用」として認められません。「事業主貸」として処理することになります。

回避策
法人化を検討する。法人化すれば、制度設計次第で経費化の道が開けます。

あなたの会社で「今すぐ実行できる」制度設計ステップ

ここからは、あなたが明日から動けるように、具体的なステップを示します。

ステップ①:社内規程を1枚の紙にまとめる

難しく考える必要はありません。A4用紙1枚で十分です。以下の項目を明記してください。

制度名:「健康診断・人間ドック費用補助制度」
対象者:「40歳以上の全従業員(役員含む)」または「勤続5年以上の全従業員」
内容:「年1回、会社指定の医療機関で人間ドックを受診できる」
会社負担範囲:「基本コース(上限90,000円)」
本人負担:「オプション検査費用」
申込方法:「総務部に申し出る」
実施時期:「毎年4月〜翌年3月」

これだけです。弁護士に頼む必要もありません。

ステップ②:対象者リストを作る

Excelで十分です。以下の項目を記録してください。

氏名
年齢
役職
対象可否(○/×)
受診希望(希望/未定/辞退)
受診日
費用

このリストがあれば、税務調査で「制度が実際に運用されている」ことを証明できます。

ステップ③:医療機関と契約する(または会社名義で領収書をもらう)

健診機関に「法人契約できますか」と聞いてください。多くの機関は対応しています。もし法人契約が難しい場合は、受診者が立替払いし、後日会社名義の領収書を発行してもらう形でも構いません。重要なのは、「会社が負担した」という記録を残すことです。

ステップ④:社員に案内を出す

メールでも、朝礼でも構いません。以下のように伝えてください。

「今年度から、40歳以上の全社員を対象に、会社負担で人間ドックを受けられる制度を開始します。希望者は総務部まで申し出てください。費用は会社が負担します(基本コース上限90,000円)。オプション検査は自己負担となります」

この案内を出した記録(メールの送信履歴、朝礼の議事録など)を残しておいてください。

ステップ⑤:税理士に「これで問題ないか」確認する

ここまで準備したら、顧問税理士に見せてください。「この制度設計で、福利厚生費として損金算入できますか」と聞くだけです。もし税理士が「問題ない」と言えば、あとは実行するだけです。もし「ここを修正した方がいい」と言われたら、その場で修正してください。

さて、「ここまで制度の仕組みについてお伝えしましたが、実は経営者が行動できるかどうかは「制度の知識」ではなく、「危機を自分ごと化できるか」にかかっています。
そこで、実際に制度を活用し、倒れる前に気づけた経営者の事例をご紹介します。あなた自身に置き換えながら読み進めてみてください。」

制度だけでは救えない「実際にあった50代の経営者の健康の話」

実践事例:ある社長が「倒れる前に気づけた」理由ここで、実際の事例をご紹介します。

事例:製造業A社(年商10億円、従業員30名、社長52歳)
A社の社長は、典型的な「多忙な経営者」でした。朝7時に出社し、夜10時まで働く。休日も顧客対応や資料作成に追われる。食事は立ち食いそば、睡眠は5時間。「まだ50代前半だから大丈夫」と本人は言っていました。

しかし、ある年の人間ドックで、以下の異常が見つかりました。

空腹時血糖値:126mg/dL(糖尿病域)
HbA1c:6.8%(糖尿病予備軍)
肝機能(γ-GTP):180IU/L(脂肪肝)
血圧:152/98mmHg(高血圧)

医師からは「このまま放置すれば、3年以内に糖尿病に移行し、5年後には合併症(網膜症、腎症、神経障害)のリスクが高まる。脳梗塞や心筋梗塞の可能性も否定できない」と告げられました。

社長はショックを受けましたが、同時に「気づけてよかった」とも感じました。もし検査を受けていなければ、数年後に倒れていた可能性が高かったからです。

その後の変化

社長は、以下の対応を取りました。
生活習慣の改善:食事を見直し、週3回の運動を開始
定期フォロー:3ヶ月ごとに血液検査を受け、数値を追跡
社内制度の整備:自分だけでなく、全社員を対象に人間ドック制度を導入

結果として、1年後には血糖値・肝機能・血圧すべてが正常範囲に戻りました。そして何より、判断力と集中力が明らかに回復したといいます。「以前は、午後になると頭がボーッとして、数字が頭に入ってこなかった。今は夕方でも集中できる。あの時検査を受けていなければ、今頃この会社は存在していなかったかもしれない」とおっしゃっていました。

経営者のあなたがやるべきこと「3選」

あなたが「今日」やるべきことについてお伝えをします。
ここまで読んだあなたは、おそらくこう思っているはずです。「理屈はわかった。でも、何から始めればいいのか」

答えは簡単です。今日、この3つをやってください。

①:カレンダーに「人間ドック予約」と書き込む

今すぐ、スマホのカレンダーを開いてください。来月の予定を見てください。1日でも空いている日があれば、そこに「人間ドック予約」と書き込んでください。

「来月は忙しい」と思うかもしれません。しかし、来月より暇な月は、今後一生来ません。 今やらなければ、一生やりません。

②:総務担当者(または税理士)に「健診制度を作りたい」と伝える

今すぐ、総務担当者にメールしてください。もし総務担当者がいなければ、顧問税理士にメールしてください。

メールの文章
件名:「健康診断・人間ドック制度の導入について」
本文:「当社でも、従業員の健康管理を強化したいと考えています。会社負担で人間ドックを受けられる制度を導入したいので、制度設計を相談させてください」

これだけです。送信ボタンを押すのに、30秒もかかりません。

③:このページをブックマークする

この記事には、制度設計のすべてが書かれています。あとで見返せるように、今すぐブックマークしてください。そして、1週間後にもう一度読んでください。その時には、「やるべきこと」がより明確になっているはずです。

経営者は経費で健康診断を落とすことよりも大切なこと

ここまで、制度設計の話をしてきました。しかし、健診を受けるだけでは不十分です。 異常値が出た後のフォロー体制こそが、あなたの判断力を守る最重要ポイントです。

なぜ、多くの経営者は「検査結果を放置する」のか人間ドックで異常値が出ても、多くの経営者はこう考えます。

「まだ症状はないから、大丈夫だろう」 「忙しいから、病院に行く時間がない」 「薬を飲むのは抵抗がある」

こうして、検査結果は引き出しの奥にしまわれ、忘れ去られます。しかし、異常値を放置することは、時限爆弾を抱えて経営を続けるようなものです。 いつ爆発するかわからない。爆発した時には、すべてが手遅れになっている。

経営者に知ってほしい「パーソナルドクターの存在」

パーソナルドクターという選択肢
ここで、パーソナルドクターという選択肢が浮上します。パーーソナルドクターとは、あなた専属の医師のことです。検査結果を見て、あなたの生活・仕事スタイルに合わせた改善策を提案し、定期的にフォローします。具体的には、以下のようなサポートを受けられます。

①:検査結果の翻訳
医師の診断書は、専門用語だらけで読みにくいものです。パーソナルドクターは、それを「あなたの言葉」に翻訳します。例:「HbA1c 6.8%」→「このまま放置すると、3年以内に糖尿病になる可能性が高い。今なら生活習慣の改善だけで正常値に戻せる」

②:あなたの生活に合わせた改善策
一般的な健康指導は、「運動しましょう」「野菜を食べましょう」といった抽象的なアドバイスです。しかし、多忙なあなたには実行不可能です。

パーソナルドクターは、あなたの生活スタイルに合わせた具体的な提案をします。

例:「朝の立ち食いそばをやめて、コンビニのサラダチキンとゆで卵に変える」

「エレベーターを使わず、階段を使う(これだけで1日の運動量が20%増える)」
「夜10時以降は食べない(夕食は午後7時までに済ませる)」

③:定期フォローによる「強制力」
人は、一人では続けられません。しかし、「3ヶ月後に血液検査の結果を報告する」という約束があれば、続けられます。パーソナルドクターは、あなたに「強制力」を与えます。それは、あなたの判断力を守るための、最も確実な方法です。

法人契約という選択肢
パーソナルドクターは、個人契約だけでなく、法人契約という形でも提供されています。法人契約では、経営者だけでなく、役員・管理職・社員全体の健康管理をサポートします。具体的には、以下のようなサービスが含まれます。

・社内規程の作成サポート
・健診機関との契約サポート
・検査結果の一元管理
・異常値が出た社員への個別フォロー
・産業医面談の調整
・メンタルヘルス対策

これにより、「健診を受けさせて終わり」ではなく、「実効的に健康投資する」体制が整います。

まとめ:あなたの判断力は、あなたの健康で決まる

ここまで読んだあなたは、もう気づいているはずです。
あなたの判断ミスは、能力不足ではなく、体調不良が原因かもしれない。

血圧の乱れ、血糖値の異常、慢性的な疲労。
これらは、あなたの集中力、判断力、対人関係のすべてに影響します。そして、それは企業価値に直結します。

しかし、適切に制度設計すれば、健康診断・人間ドックは会社の経費として認められます。国税庁の資料にも明記されています。問題は、「知らない」ことではなく、「知っているのに動かない」ことです。

今日、この3つをやってください。

カレンダーに「人間ドック予約」と書き込む
総務担当者(または税理士)に「健診制度を作りたい」と伝える
迷った時は、弊社にご連絡をいただければ、最適な方法をご提案いたします。

あなたの判断力は、あなたの健康で決まります。そして、あなたの健康は、あなたの行動で決まります。あなたとあなたの会社の未来を、一緒に守りましょう。

免責事項
本記事は経営者に向けた情報提供を目的としています。具体的な税務判断や導入可否については、担当の税理士・公認会計士にご相談ください。制度の適用可否は個別の事情によって異なります。また、金額基準(70,000〜90,000円)は法定基準ではなく、実務上の通念として広く採用されている水準です。

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